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再訪中国の旅5、本多勝一 旅順虐殺

週刊金曜日1995年8月25日号より引用。
P40三月一五日。大連に寄ったらぜひ訪ねてみたいと思っていたのは、日清戦争にまつわる事物である。日本の軍国主義が飛躍的にすすむことになるこの最初の対外大戦争(一八九四〜五年)が終って今年で一〇〇年、生きている体験者はもちろんいない。最後の体験者は一〇年ほど前(一九七六年)に九六歳で死んだという。
 旅順を占領した日本軍による無差別な残虐行為(旅順虐殺事件)外国に当時報道されたが、たとえば南京大虐殺で生存者から聞ききしたような細部の内容を知ることは、もはやできない。
(略)旅順には虐殺の死体が、うめられたという万人坑があり、去年それが発掘されたときの写真もある。さまざまな虐殺の実態紹介のあと、清朝の腐敗が侵略を許した背景でもあることを指摘し、教訓としている。(略)

P41いや、戦後どころか日清戦争の実態そのものが、実はまるで伝えれていない。あたかも南京大虐殺の実態がわかりはじめるのに戦後何十年もかかったように。最近刊行された。日清戦争従軍写真帖ー伯爵・亀井茲明の日記(柏書房)で、藤村道生氏は次のように解説している。
「ワールド」は「旅順の日本軍は陥落の翌日から四日間、非戦闘員、婦女子など約六万人を殺害し、殺戮を免れた清国人は旅順全市でわずか三十六人に過ぎない」と報じ、そのうえで。日本は文明の皮膚を被り野蛮の筋肉を有する怪獣なり、日本は今や文明の仮面を脱し、野蛮の本体を暴露した」と糾弾した。旅順から日本に立ち寄った『タイムズ』通信員は陸奥外相に、「日本軍は捕虜を縛ったまま殺害し、平民とくに婦人まで殺害したのは事実である。これは各国記者や東洋艦隊の士官が目撃している」と強調し、「日本政府の善後策如何」と質問した。(略)
P42国内ではこの事件は厳重に秘匿された。直接の責任者は第二旅団長として旅順攻略を指摘した乃木少将にあると思われ、今日でも大連市では子供が泣きやまぬとノギが来るぞ」といって黙らせる由であるが、かれの責任は問われず、一〇年後
の日露戦争における旅順要塞の攻略と明治天皐への殉死により聖将として乃木神社にまつられている。
 それでは日清戦争の戦後がどうだったがを簡略に述べるために、一八九五年四月一七日に下関で調印された講和条約について、講談社版『日本全史』の「日清講和条約」の項から引用しよう。「その要旨ばつぎのようなものである。靖国は朝鮮が独立自主の国であることを承認する。②清国は遼東半島・台湾・澎湖列島を割譲する。③清国は賠償金として庫平銀(庫平とは納税用の清朝の秤)二億両(約三億円)を支払う。④清国は新たに沙市・重慶・蘇州・杭州を開市・開港し、日本汽船の航行権を長江は重慶、呉松江は蘇州・杭州まで延長する。講和会議では、李鴻章がただちに休戦に入ることを求めたのに対し、軍部が休戦に反対していることを知っていた伊藤(博文)は、清国側に苛酷な条件を提示して休戦を引き延ばし、占領地の拡大をもくろんでいた。しかし、三月二四日、自由党の壮士小山豊太郎が李鴻章をピストルで撃ち、重傷を負わせたことに日本政府は狼狽。休戦を承認し、講和の話し合いが進められていた。日本はこれを機に植民地帝国へと歩を進め、巨額の賠償金は軍備拡大や日本資本主義の発展・育成の財源となる」
 右のなかで「庫平銀二億両」がどれほど巨額を賠償金だったか、ピンとくる日本人は少ないであろう。これは石川真澄氏の一文から引用するとわかりやすい。

「一八八九四年八月から翌年四月までの日清戦争に日本は勝って台湾・澎湖列島の割譲などのほか、賠償金二億両を得た。日本円で三億六千四百万円、当時の日本の国家予算の四年分だった」(。朝日新聞』一九九五年六月二七日「現代史ウオッチング」)
 以後、日本は朝鮮の植民地化へとバク進し、中国にたいしても五〇年間におよぶ侵略がつづくことになる。“国家予算四年分」もの巨額の賠償金は、まさに「日本資本主義の発展・育成の財源」(前記。日本全史』から)となった。日中戦争は「一五年戦争」ではあるまい。つまり日本は旅順大虐殺をともなう侵略を中国にした上で莫大な賠償金をとり、それによって飛躍的な経済発展の基礎をかためた。それがまた南京大虐殺その他のよりおおきな侵略で中国を苦しめる悪循環ともなりつつ、一九四五年(日本敗戦)をむかえる。
 だが、こんどは「侵略された側」たる中国が、日本にたいする国家間賠償を放棄して平和条約を結んだ。これはまさに「天地の違い」であろう。日本側にその認識がなくても、中国側は日本の「援助」や「戦後補償」にこうした背景を忘れてはいない。(略)
ーー(引用終わり)
以前掲載の再訪中国の旅の最終回が抜けていたので、掲載。司馬遼太郎は明治時代をよきものと「坂の上の雲」だったかの小説に書いていたが、だいぶ真実のイメージは違うなあ。日本軍の虐殺のDNAは日清戦争から始まってたいたとは。それにしても中国、韓国が日本に対しての国家賠償を放棄しているのはなぜなのか?
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